ブルゴーニュの鬼才「ルシアン・ル・モワンヌ」当主による熱いセミナー初開催!

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レポート
公開日 : 2018.3.17
更新日 : 2019.3.7
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イベントの看板
ブルゴーニュワインラヴァーから熱い視線を集めるネゴシアン、ルシアン・ル・モワンヌより、当主のムニール・サウマ氏が来日!
ワインショップ・エノテカ 銀座店では初めてとなるセミナー形式のテイスティングイベントが行われました!ブルゴーニュワインラヴァーが駆けつけ熱気に包まれた熱いイベントをレポートします。
お話をするムニールサウマ氏
ムニール・サウマ氏
ムニール・サウマ氏といえば、ブルゴーニュワインを語らせれば右に出るものはいないと評判の鬼才。ブルゴーニュのアペラシオン全域の知識を深く理解している人物はごく稀で、畑の所有者にもリスペクトされるほどにブルゴーニュワインへの深い造詣と愛をもった人物です。
セミナーが行われたのは日曜日の夕方。通常のカジュアルなテイスティングイベントとは違って、各テーブルには、セミナー用のグラスとテイスティングシートがずらりとセッティングされています。
今回はセミナー形式ということもあって参加者は20名弱という少人数限定で行われましたが、告知後早々に満席になるほどの人気ぶり。会場に駆けつけたブルゴーニュラヴァー達を前に「日曜日の夕方なのに、学校の授業みたいで申し訳ないけどリラックスして楽しんで(笑)!」とのサウマ氏の一声でセミナーは始まりました。
目次

100年前のブルゴーニュワインをつくりたい

ブルゴーニュのワイン畑
レバノン出身のムニール・サウマ氏は、なんと元シトー派の僧侶。20代前半で僧侶となり、約5年間を修道院で過ごすなかでワイン造りを学び、そのことがきっかけでワインの世界にのめり込むようになりました。
僧侶とワインが結びつかない方も多いかもしれませんが、フランスでシトー派と言えば、ブルゴーニュ全域にワイン造りを広め、現代のブルゴーニュのアペラシオンの基礎を築いたテロワール研究の祖。またの名を利酒(ききざけ)騎士団とも言われています。
僧侶時代にブルゴーニュワインに開眼したサウマ氏は、モンペリエ大学で栽培と醸造を学び、フランス各地のワイナリーやカリフォルニアで修業した後、同じくワイン造りを学んで各地で修業した奥さんのロテムさんと共に1999年に「ルシアン・ル・モワンヌ」を創立。一流ドメーヌが所有する最上の畑(特級、一級)のみで造られたワインを樽で購入し、熟成、瓶詰を行うというネゴシアンスタイルでワインをリリースし、直後からワイン・アドヴォケイト誌で「彼は短期間で最も優れたネゴシアンの一つを作りあげた」と称賛されるなど、瞬く間にスター生産者の階段を駆け上がりました。
そんなサウマ氏のワイン造りの目的はただ一つ、「100年前の偉大なブルゴーニュワインをつくる」こと。100年前は、限りなく自然なかたちでワインを醸造し、添加物を加えることなく自然に熟成させていました。
ルシアン・ル・モワンヌでは、低温発酵したワインは約2年間もの間樽に入れたまま放置され、自然な熟成が進みます。その間は酸化を避けるため澱引きを一切行わず、また、亜硫酸を極力加えずワインから出た澱と炭酸ガスで酸化を防ぐという、まさに100年前に近い方法でワイン造りが行われています。こうして生まれるワインは非常にフレッシュでありながら、澱のエキス分と経年による熟成によって驚くほど複雑な味わいに変化しており、現代的な製法で造られたワインとは一線を画した、味わい深い唯一無二の個性を備えています。

酸素はワインの友だち

こうして100年前の手法で造られたサウマ氏のワインには、飲む前に必ず行って欲しいことがあります。それは「デキャンタージュ」。その方法をサウマ氏が伝授してくださいました。ぜひ動画でご覧ください。
亜硫酸を極力加えず、ワインから自然と出た炭酸ガスと澱によって酸化を防いでいるルシアン・ル・モワンヌのワインには、液中に微量の炭酸ガスが含まれています。そのため、デキャンタージュすることで液中のガスを飛ばす必要があるのです。また、長年澱と炭酸ガスに守られて酸素に触れることのなかった「赤ちゃんのような」ワインは最初は閉じていますが、デキャンタージュして酸素と触れることでゆっくりと香りが開いていき、驚くほどの変化を遂げます。サウマ氏が「デキャンタージュしてもボトルに戻して冷蔵庫に入れておけば1週間は楽しめる。」と話すように、熟成中の酸化を極力避けて造られるルシアン・ル・モワンヌのワインは、抜栓後の酸化による変化が緩やかな点も大きな特徴です。

グラスの中のワインの変化を楽しむ

グラスに注がれた赤ワインと白ワイン4種類
さっそくテイスティングが始まりました。今回テイスティングしたのは以下のワインです。
  • 2014年 シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエ・クリュ・カイユレ 19,000円(税抜)
  • 2015年 ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ・オー・デシュ・デ・マルコンソール 36,000円(税抜)
  • 2015年 グラン・エシェゾー・グラン・クリュ 60,000円(税抜)
  • 2015年 ボンヌ・マール・グラン・クリュ 55,000円(税抜)
  • ブラインドテイスティングで供されたのは、以下のワイン。
  • 2015年 シャンボール・ミュジニー・プルミエ・クリュ・レ・フュエ 21,000円(税抜)
  • 2015年 ヴォーヌ・ロマネ・レ・スショ 27,000円(税抜)
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    最初の1杯目は白ワインの「2014年 シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエ・クリュ・カイユレ」。カイユレは「カイユ=小石」から来ており、小石の多い土壌から生まれるワインはミネラルに富んだ味わいが特徴的です。
    このミネラルについてサウマ氏は「マグネシウムを多く含むミネラルウォーターを想像してください。ワインにも様々なミネラルが含まれるんです。それと、よくミネラルをスモーキーな香りと勘違いする方がいますが、ミネラルは塩味を感じるものです。このカイユレは、石がごつごつとした山を歩いている時に感じるような香りをもっています。」と説明。
    グラスに注がれたワインは、シトラスやトロピカルフルーツの華やかなアロマに加え、口に含むとオイリーなテクスチャーと塩味を感じるほどのたっぷりのミネラルが広がります。さらにサウマ氏の指示で、テイスティング中のワインは、グラスに少し残しておきます。すると数分後にさらに香りが開き、洋ナシのような香りや甘みが加わって味わいが進化していきます。「酸素はワインの友だち。グラスの中の変化を楽しんで!」とサウマ氏。

    ワインは本みたいなもの

    ワインボトルが並んでいる
    次にブラインドで2種のワインが供されました。
    1つ目のワインは、「2015年 シャンボール・ミュジニー・プルミエ・クリュ・レ・フュエ」で、2つ目のワインは「2015年 ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ・レ・スショ」。シャンボール・ミュジニーには赤系果実やフラワーブーケの華やかな香りと繊細なフィニッシュが感じられ、一方でヴォーヌ・ロマネにはよりアーシーなニュアンスがあり、コート・ロティを思わせる力強さと、余韻にはブドウの旨味がじんわりと残ります。
    ここでテイスティングに関してサウマ氏からのアドバイスが。「皆さん香りに注目が行きがちだけど、余韻や飲み心地にこそ注力してほしい。口に含んだ後の飲み心地がワインの偉大さを表現していると思います。」
    確かに、澱と共に長期間の熟成を経ているからでしょうか。ルシアン・ル・モワンヌのワインは、香りは酸素に触れる度に変化しつつも、口に含むと確固たる旨味と余韻が長く舌に残るのが印象的です。
    また、サウマ氏はプルミエ・クリュとグラン・クリュの違いについておもしろい喩えを披露してくれました。
    「プルミエ・クリュは自ら語りかけてくれる。例えば、私にはスパイスがあって、果実の香りもあります、といった具合に。一方で、グラン・クリュはコーナーに足を組んで座って、私を知りたければあなたから来なさい、という感じ(笑)…偉大さがある。プルミエ・クリュが簡単に読める本だとすると、グラン・クリュは何か月もかけないと読めない本のようとも言える。どっちもそれぞれの良さがあるけど、グラン・クリュはプルミエ・クリュの倍の時間をかけてじっくりと楽しむことができるんだ。」と話してくれました。

    テロワールが語る

    ワインに合わせたおつまみとワイン
    今回のテイスティングでは、ワインに合わせて銀座ミレ特製のおつまみが供されました。
    最後はグラン・クリュ2種の豪華飲み比べ。「2015年 グラン・エシェゾー・グラン・クリュ」は、最初は香りが閉じ気味ですが、徐々に凝縮した赤系果実や鉄っぽいミネラル、コーヒー、燻製肉のような複雑な香りが広がってきます。サウマ氏はグラン・エシェゾーについて「ミステリアスで、理解がなかなか難しいアペラシオン。フェイク・ジェントルで、やさしいと思ったら突然牙を向く。」と表現。「深い森を散策する夢見がちな貴族」と喩えられることもあり、グラスに注いでしばらくすると、最初の印象と異なる妖艶な香りが立ち上る様は、確かにミステリアスな魅力を秘めています。
    テイスティングの最後を飾ったのは「2015年 ボンヌ・マール・グラン・クリュ」。サウマ氏が「全てをもっている畑」(All Paradox)と形容する完全無敵のグラン・クリュですが、その理由は畑の立地と土壌にあります。
    モレ・サン・ドニとシャンボール・ミュジニーにまたがるボンヌ・マールの畑には、北向きと南向きの区画があり、さらには白い石灰質土壌(white limestone)と、赤い石灰質土壌(red limestone)という全く異なる土壌の区画が存在しています。この際立った個性をもつ4種の区画全てに畑を所有する生産者は存在しません。しかし、ルシアン・ル・モワンヌでは、この4つの区画すべてのワインをブレンドした世界で唯一のボンヌ・マールを造っているのです。
    サウマ氏曰く、ボンヌ・マールは2,500年前から存在するブルゴーニュで一番古い畑でもあるそうです。相反するキャラクター(北向きと南向き、白い石灰質と赤い石灰質土壌)全てを内包する最古のグラン・クリュだからこそ、サウマ氏が「全てをもっている」と表現するのでしょう。
    グラスに注がれたワインは完熟した赤系果実のアロマに、森を思わせるアーシーな香りが幾重にも重なります。タンニンは見事に熟しており、口当たりはどこまでもシルキー。驚くほど長く、深みのある余韻に魅了されます。サウマ氏のボンヌ・マール愛は相当なもので「世界で一番好きなテロワール!ボンヌ・マールが嫌いな人とは一緒にテイスティングしたくないよ!(笑)」と叫んで会場を沸かせていました。

    最後に

    100年前の伝統的な製法で造られるルシアン・ル・モワンヌのワインは、驚くほどピュアでフレッシュ、そして抜栓後は酸素と触れさせることで香りは目まぐるしく変化しつつ深い余韻がある、という多面的な魅力をもっています。それはまるで子供のような純粋さと僧侶のようなストイックさ、学者のような知性、そしてワインを心底楽しむユーモアとパッションをもつサウマ氏自身の多面的な魅力に通じるものがあります。
    熱いセミナーの後は、会場のお客様それぞれがサウマ氏とブルゴーニュ談義に花を咲かせ、長い余韻を愉しみ、ブルゴーニュラヴァーにとって夢のような時間が過ぎていきました。

    今回イベントが行われた ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレ

    銀座ミレ店のバーコーナー
    ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレ
    住所 〒104-0061 東京都中央区銀座6-8-3 銀座尾張町 TOWER 2階
    TEL 03-3573-1531 / FAX 03-3573-1532
    E-mail Ginzasec_shop@enoteca.co.jp
    営業時間 ショップ 11:00~21:00
    カフェ&バー 11:00~22:00 (L.O.21:00)
    ◆ランチ 平日:11:00~16:00(L.O.) 土日祝:11:00~14:30(L.O.)
     
    ルシアンルモワンヌのページ
     
     
     
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