文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」 小説家・江國香織さん登場!

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レポート
公開日 : 2017.6.21
更新日 : 2018.10.23
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先日、第12回文学ワイン会「本の音 夜話」がワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー・エノテカ・ミレで開催され、小説家の江國香織さんにゲストでお越しいただきました!
ご著書にもワインやお酒の印象的な描写が数多く登場し、ナビゲーターの山内宏泰さんから、「待望の江國香織さんにお越しいただきました!」とご紹介された江國香織さん。お酒全般は何でもお好きだという江國さんの作品には、ビールやウオッカ、グラッパ、ジントニックなどなど、お酒が印象的に登場するシーンが数多くあります。そしてもちろん、ワインも。『きらきらひかる』では、シャンパンを飲むシーンのとても印象的な小道具として、シャンパンマドラーが登場しました。ちなみに以前、ゲストでご登場いただいた小説家の島本理生さんも、お酒が印象的に登場する小説として『きらきらひかる』を挙げられ、小説に登場したシャンパンマドラーを実際に購入した、というお話を披露されていらっしゃいました。
 
そのお話を聞いて、「懐かしいなあ」と江國さん。
「シャンパンマドラーはそう、20代の頃に知って、すごく印象的だったので小説に書きました。上等ではないものをかき混ぜて泡を立てる道具で、上等ではない、だけどシャンパン、という変なアンバランスさが面白いと思ったんですね」
 
このイベント時、江國さんとお客様にサーブしたワインのひとつが、モンテス・アルファ・カベルネ・ソーヴィニヨン・ ヴィンテージ・セレクション 2007。実は、江國さんの小説『左岸』では、このワインが実名で登場します。ぜひ江國さんに飲んでいただきたい、と今回は同じワインを、しかもチリワインとしては珍しい10年熟成もののスペシャルバージョンをご用意させていただきました。
モンテス・アルファ・カベルネ・ソーヴィニヨン・ ヴィンテージ・セレクション 2007 (チリ コルチャグア・ヴァレー) 赤5,000 円 (5,400 円 税込)
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小説の前も、後も、世界は続いている。

江國さんは長編小説を執筆する際、先が見えないまま、書かれるのだそうです。 創作についてお伺いしました。
「まったく先が見えていないまま、どこに行くかわからないまま、書きます。場所があって、人があって、時間が流れれば、物語はできると思っています。 最初に場所や人を設定だけして、家族とは何かとか、あまりにも誰かを好きになったらその後はどうなるのか、など、知りたいことを書く。それはこうなる、ということを書きたいのではなくて、どうなるかわからないから書いてみるんです。 もし、ものすごく度を失っている恋愛のさなかに相手がいなくなった場合、という設定で『神様のボート』を書いてみました。恋愛って絶対に変わっていくものじゃないですか、ハッピーエンドでも、恋人同士とか、夫婦でも。恋愛の初期の頃は変わりたくないし、変わるつもりがない。それなのに、どちらも浮気もしていなくても、関係は確実に変わっていきます。それは、深まると言えるのかもしれないですけど。この情熱を変えたくないと思ったら、いなくなればいいんだ、絶頂の最中に片方がいなくなれば、そのままキープができると思って。でもその結果、ふたりはまた会えるのか、もしくは最初からいなかったとか、気が狂ってしまったとか、自分でも先がわからないままに書いているんです」
 
江國さんの中に、最初にひとつの問いがあり、それを追いかける形で物語ができています。
 
「めでたしめでたし、の後を知りたいじゃないですか。きっと知りたがりなんでしょうね。小説ひとつを書き終わっても、閉じていない小説が多い。その先もまだ続いている。これで一応めでたしですよ、というのはなんかちょっと嘘っぽいようなかんじがありまして。その先はどうなるかわからない、という余地は残したい。どこまでも書くことはできないですし、どんな小説でも切り取られた一部みたいなところがありますから。その前も、その後も、世界は続いていく。それが気持ちいいですよね」

最新長編小説 『なかなか暮れない夏の夕暮れ』について。

最新作の『なかなか暮れない夏の夕暮れ』は、表紙にワインも描かれている大人の小説。登場人物は皆、ほぼ50歳以上です。
「50歳の男性が主人公です。この作品を最初に書こうと思った動機のひとつでもあるんですが、小説の中では、たいていの場合、50代の喋り方がきちんとしているんですよね。それはそれですごくリアリティがありますが、私の周りの50代は、主人公の稔(みのる)みたいな喋り方をする人が多いんです。(知人を)“じゅんじゅん”って言ったり、マジですか、って言ったり。でも文字で書くとどうがんばっても、30代の営業マンみたいになってしまう(笑)。 実際には50代の人もこう話しているんですよね。でも50代っぽく感じるには、本当は言っていないけれども、「これあなた召し上がる?」とか、「いや、僕は結構、君がおあがり」とか、そっちの方が50代っぽい。
 
それは別にルールではないのですが、選ばれたときのリアリティで、“マジですか”と話す人は現実にはいるけれど、それを書くことで逆にリアリティがなくなってしまうということがあるので、リアリティがなくなったらいやだな、怖いな、と思いながらも書いてみることがひとつのチャレンジでした。現にいるし、いるんだったら書いてもいいのかな、と。この中ではこうである、というふうな世界の厚みみたいなものの中に作ってしまえば、外がどうであれ成立すると思うんです。
私の周りにもこんな感じの人は多いですよ。こんなもんですよね、50歳って。50歳になったから、30歳になったから、って人ってそんなに変わらないですよね」
イベントでは、ワインやお酒にまつわるお話をはじめとして、創作上のこだわりや小説での表現・描写についてなど、たくさんお話しいただきました。中には、まるで江國さんの小説を読んでいるかのような、ハッとするような繊細な言葉や印象的なフレーズもお聞きすることができました。最後にお客様から寄せられた山のような質問にも、気さくにすべてお答えいただいた江國さん。ワインがお好きだからか、ワインの思い出や印象に残るワインなど、ワインに絡んだ質問が多かったのも印象的でした。
 
江國さんの柔らかな雰囲気に包まれながら、ワインが登場するご著書についてお話しいただきつつ、しかも実際にそのワインを楽しむことができた、またとなく貴重で、至福のひとときとなりました!
最新長編小説『なかなか暮れない夏の夕暮れ』(角川春樹事務所)定価1,600円+税 
撮影・佐藤麻優子
 
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレ
http://www.enoteca.co.jp/shop/ginza
東京都中央区銀座6-8-3 銀座尾張町 TOWER 2階
TEL 03-3573-1531 / FAX 03-3573-1532
E-mail Ginzasec_shop@enoteca.co.jp
営業時間
ショップ 11:00~21:00
カフェ&バー エノテカ・ミレ 11:00~21:00(L.O.) 22:00(CLOSE)
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