シャンパーニュ地方と言えば、スパークリングワインの銘醸地。誰もがそうイメージするかと思います。
しかし近年、シャンパーニュ地方で非発泡性のワインを造る生産者が増えてきています。
生産者が非発泡性のワインに注目するのはなぜなのか?そんな疑問に迫ります!
シャンパーニュ地方の今まで
シャンパーニュ地方には三つのA.O.C.があり、その大部分を占めるのがA.O.C.シャンパーニュです。瓶内二次発酵で造られる発泡性のワイン、いわゆるシャンパンがこれにあたります。
きめ細やかな泡立ちに香ばしい香り、そして引き締まった酸味と長い余韻は、世界中のワイン愛好家たちを虜にしています。
シャンパンがあまりにも有名なため、残り二つのA.O.C.はあまり知られていませんが、実はここで非発泡性のワインが造られているのです。
その代表的なA.O.C.がコトー・シャンプノワ。
ここでは赤ワイン、白ワイン、ロゼワインの非発泡性ワインの生産が認められています。
シャンパンが造られる以前より生産されており、かつては歴代のフランス王の戴冠式で行われる祝宴でも振る舞われるほどでした。
しかしシャンパーニュ地方の冷涼な気候ではブドウが完熟するのは難しく、高品質な非発泡性ワインを生産することに苦労していました。
さらにシャンパンが人気になってからは非発泡性ワインの需要は著しく減少。非発泡性ワインを造る生産者自体も少なくなっていきました。
ではなぜ今、非発泡性ワインを造る生産者が増えてきているのでしょうか?
シャンパーニュ地方の新たな表現方法
まず挙げられるのが、気候変動による地球温暖化です。
冷涼な気候のシャンパーニュ地方では、これまで完熟したブドウを安定的に栽培することは難しいと言われてきました。
しかし、過去30年の間に温暖化が進んだことで、熟したブドウがより安定して栽培でき、以前よりも高品質な非発泡性ワインを造ることが可能になったのです。
もう一つ挙げられるのが、生産者の飽くなき探求心です。
複数の年のワインをブレンドすることが一般的なシャンパン。一方で非発泡性ワインは基本的に単一年のブドウを使用して造られます。
シャンパーニュという産地にこだわりをもつ生産者にとって、単一年のブドウを使用した非発泡性ワインは優れたテロワールを表現するもう一つの方法となりました。
さらに単一品種、単一畑にこだわる生産者も現れ、テロワールを表現するための探求が続いています。
大手シャンパーニュメゾンの挑戦
ここからは実際に生産者の取り組みをご紹介します。
まず、ほかのメゾンに先駆けて生産を行っていたのがシャンパーニュメゾン、ボランジェ。
ボランジェは優良年のみに造られる特別なロゼシャンパン、「ラ・グランダネ・ロゼ」のブレンドに使用するため20世紀初頭からブドウ畑を再編し、赤ワインを造っていました。
その品質の高さから非発泡性の赤ワイン「ラ・コート・オー・ザンファン」としてリリース。現在も優良年のみに少量生産され、リリースされるたびに注目を集めています。
近年の生産で注目が集まっているのは、200年以上の歴史を持つ老舗シャンパーニュメゾン、ルイ・ロデレール。
2021年、15年にも及ぶ長期プロジェクト末、初の非発泡性ワインをリリースしました。
赤ワイン、白ワイン共に単一品種、単一年から造られ、どちらもルイ・ロデレールが所有する、優れたテロワールを表現しています。
しかしその生産量は赤ワインでわずか1,631本、白ワインで2,880本。その生産量の少なさ、約15年をかけリリースしていることからも、生産の難しさがうかがえます。
また、シャンパーニュ地方で4番目に長い歴史があるシャンパーニュメゾン、シャルル・エドシックは自社畑のなかで非発泡性ワインとして通用する栽培区画を見つけ出すことに成功しました。
2019年に四つの単一畑、単一年、単一品種の白ワインをリリース。さらに2021年には、単一年のコトー・シャンプノワの赤ワインをリリースしており、注目されています。
まとめ
これからも目が離せない、シャンパーニュ地方の非発泡性ワイン。
テロワールの新しい表現を求めて、まだまだ生産者の挑戦は続きそうです。
皆さんもぜひシャンパーニュ地方の非発泡性ワインの奥深い世界を、のぞいてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】 https://www.thedrinksbusiness.com/