【バイヤーが語る】クリュ・デュ・ボジョレーの次世代ドメーヌ ブラン・スール・エ・フレールの魅力!
お気に入り追加
ボジョレーと聞くと、ボジョレー・ヌーヴォーを思い浮かべる方も多いかと思いのではないでしょうか。
実は、ボジョレー地区北部には自らの村名を名乗ることができる10のA.O.C.が存在します。これらはクリュ・デュ・ボジョレーと総称され、生み出すワインの品質の高さから近年注目を集めています。
今回はそんなクリュ・デュ・ボジョレーでワインを造る、次世代ドメーヌ「ブラン・スール・エ・フレール(以下ブラン・スール)」について、堤バイヤーに語ってもらいました。
モンラッシェの名手が新たに手掛けるドメーヌ
【プロフィール】堤俊豪
資格:調理師免許、WSET Level3 Award Wines and Spirits
商品部所属、ブルゴーニュ購買担当。入社後7年間は、北京、上海、香港、台湾にてエノテカの国際事業に携わる。海外勤務をきっかけに、現地の食材を使った料理とワインと楽しむことが趣味に。週末はワインを楽しみながら、合わせる一品を作ることに試行錯誤している。
―早速ですが、ブラン・スールとはどんな生産者なのか簡単に教えてください。
ブラン・スールは、2014年にフランス・ブルゴーニュのボジョレー地区で創業した新しいドメーヌです。
ワイナリーを運営するのは、シャサーニュ・モンラッシェのドメーヌ「ブラン・ガニャール」のオーナー、ジャン・マルク・ブランさんの息子のマルク・アントナンさんと娘のルシーさんです。
彼らがボジョレー地区のブルイィ山の斜面に広がる畑を購入し、ガメイ種からワインを造っています。
―シャサーニュ・モンラッシェとは、地域も品種も異なりますね。どんな経緯があったのでしょう。
彼らが購入した畑は、マルク・アントナンさんのおばあさまのご友人がもともと所有していたものなんです。そのご友人がご高齢になり、畑を継いでくれる人を探していて、彼に声がかかったそうです。
それまでマルク・アントナンさんは、ブラン・ガニャールの他にも、ニュージーランドや南アフリカのワイナリーでワイン造りを勉強していたのですが、このとき「シャサーニュから100km以上離れたこの地で、自分がブドウを栽培しワインを造ってみたらどうなるのか挑戦してみたい!」と想い、ボジョレー地区でワイン造りをすることを決意したそうです。
―なるほど。エノテカで取り扱いをスタートする決め手は何だったのでしょうか。
きっかけは、もちろんブラン・ガニャールを取り扱っていたことですが、直接取引をしているクリュ・デュ・ボジョレーの生産者がこれまでいなかったということも大きな理由の一つですね。
クリュ・デュ・ボジョレーは、注目度が非常に高まっている生産地なので、この地域のテロワールを、シャサーニュ・モンラッシェからの挑戦者がどのように表現していくのか。そこに注目して、現在も買い付けています。
国内外で注目が集まる クリュ・デュ・ボジョレー
―改めて、彼らが畑を所有しているクリュ・デュ・ボジョレーとは、どんな地域なのか教えてください。
ボジョレー地区のなかでも特に品質の高いブドウを産出する区画のことです。ブラン・スールが畑を所有するコート・ド・ブルイィをはじめとした、10区画が含まれます。
“ボジョレー”と聞くと、ボジョレー・ヌーヴォーのようなフレッシュで爽やかな味わいを思い浮かべる方も多いかと思います。
しかし、クリュ・デュ・ボジョレーで造られるワインは、同じガメイ種で造られたとは思えないほど複雑な味わいが特徴で、中には長期熟成が可能なものもあるほど。その品質の高さから、近年非常に注目が集まっている産地なんです。
―確かに、レストランやワインショップでクリュ・デュ・ボジョレーのワインを見かける機会が増えたように感じます。
そうですね。私は2014年にプライベートでブルゴーニュを訪れたときに、初めてしっかりとクリュ・デュ・ボジョレーのワインを飲んだのですが、当時日本ではワイン愛好家を除いて、そこまでクリュ・デュ・ボジョレーは浸透していなかったように思います。
比較的広く認識されている銘柄と言えば“ムーラン・ナ・ヴァン”くらいだったのではないでしょうか。
それが近年では、日本でも見かけることが多くなりましたね。需要の高まりを感じます。
―なるほど。この地域には若手生産者も参入していると聞きました。フランスでも注目が高まっているのでしょうか。
そうですね。ブラン・スールをはじめ、この地域でワイン造りを始める生産者は増えてきていると思います。
市場では、パリなどの大都市でレストランやナチュール系のワインショップを経営している人など、ワインへの感度が高い方から特に人気が高いようですね。
また、近年はブルゴーニュの村名ワインが1万円を超えるなど高騰していますが、このエリアのワインは3,000~4,000円と比較的手を伸ばしやすい価格帯。これも人気が高まっている理由の一つかもしれません。
実際に、私もここ最近飲む機会がぐっと増えました。
―ブルゴーニュの村名と比較すると、確かに手を伸ばしやすいですね。何か気に入っている銘柄はありますか。
そうですね…。色んな銘柄を試していますが、1本挙げるとするとやはりブラン・スールのピエール・ブルーでしょうか。
ガメイの果実味がきちんと表現されていながら、複雑で奥深い味わいで、余韻も長い。ブルゴーニュのピノ・ノワールが好きという方にもおすすめしたい味わいですね。
実は、初めてこのワインを飲んだときは「すごくかたいワインだな」と思ったんです。それが近年は、すごくエレガントで洗練された味わいになっていて。毎年飲む度に、その味わいの進化に驚いています。
これも一重に、マルク・アントナンさんが、自身の経験をもとに、色々なチャレンジをしているからだと思うんですよね。挑戦の結果がワインの味わいに如実に反映されているのだと思います。
ワインはチャレンジ精神の賜物
―マルク・アントナンさんのチャレンジがワインに反映されているということですが、例えばどんな取り組みをされたのでしょうか。
例えば、2017年から土着のハーブや草を除草せずにあえて残しています。
2017年というヴィンテージは、ブルゴーニュ全体を見ると収量の多い年なんです。でもブラン・スールはこの取り組みを始めたせいで、収量が通常の半分くらいまで減ったと言っていました。
ハーブや草にエネルギーを奪われ、ブドウ樹が環境に適応するのに時間を要してしまったんですね。
収量の激減には本当に困ったそうなんですが、土壌に多様性を持もたらしたかったということで、今は取り組んで良かったと言っていました。
他にも、畑の一部で、病害対策や樹間の調整の為、樹の仕立て方を変えたり、ブルゴーニュとは異なる土壌であることから密植率を調整したりと、日々様々な取り組みをされています。
シャサーニュ・モンラッシェ村のブラン・ガニャールで行っている発酵や醸造においても、これまで使用していなかったコンクリートタンクを取り入れてみたりと、試行錯誤されているようです。
こういった作業は非常に手間がかかる上、結果が伴うという確証はありません。そんな中で、このように果敢にチャレンジを続けているのは本当にすごいなと思いますね。
―なるほど。では、ブラン・ガニャールでの経験が活かされているなと感じる部分はありますか。
ブラン・ガニャールで培った経験は、間違いなくブラン・スールで活かされていると思います。
ブドウ栽培で共通しているといえば、畑における古樹と若木のバランスでしょうか。
ブラン・ガニャールではこのバランスを非常に大切にしていて、10~20年、30~40年、50~60年の異なる樹齢の樹からとれたブドウを使用しています。それをマルク・アントナンさんも引き継いでいて、ブラン・スールでは無理なく計画的にブドウ樹を植え替えたりしています。
これらが味わいのバランスにおける共通点を生み出しているのではないかと思います。
バイヤーおすすめの楽しみ方
―普段はブラン・スールのワインをどんな風に楽しまれていますか。
ブルゴーニュでも南の方で造られているということもあり、明るい雰囲気をまとったワインだなと思うので、外で日差しを浴びながら飲むのが気に入っています。
今はまだ寒いですが、暖かい時期はベランダに小さいテーブルを置いて、おつまみやお昼ご飯と一緒に楽しんだりしていますよ。
―気持ち良さそうですね。お食事はどんなものと合わせていますか?
シャルキュトリーやドライフルーツ、チーズはもちろん相性が良いので、よく合わせています。
また、ブラン・スールのワインは、茗荷やシソなどの薬味をたっぷりのせたマグロやカツオの刺身も合いますよ。あとは出汁の効いた鴨の治部煮とか、ちょっと脂があるお肉も良いですね。
ちなみにマルク・アントナンさんは、フルーツやタルトタタンなどのデザートと楽しむのも良いと言っていました。
ぜひ様々なものと合わせて、このブラン・スールのワインを楽しんでいただきたいです。
今回のインタビューで、ブラン・スールのワインは年々進化を遂げている!と熱く語ってくれました。
クリュ・デュ・ボジョレーでのマルク・アントナンさんのチャレンジに今後も目が離せません。堤バイヤー、ありがとうございました!