プレミアムチリワインの可能性

エノテカ編集部

お気に入り追加

レポート

公開日 : 2017.8.17

更新日 : 2019.6.13

エノテカのワインバイヤーが、ワインの最新情報について語り、時にワインの生産者やワイン界で活躍する人々と語り合う「ワインバイヤーズトーク」。今回は趣向を変え、同業他社で働く友人との「まじめな夜会」をお届けします！会社は違えど、パッションを共有できるワイン業界人との交流は楽しく、昔話に花を咲かせたり、直近の市場動向を共有したり、将来の夢を語ったり。今回はシャンパーニュやブルゴーニュを飲みながら、なぜかチリのプレミアムワインについて談義しました！

チリワインは絶好調。昨年2016年には2年連続でスティルワインの国別輸入量がナンバーワン。つまり、フランスワインやイタリアワインより輸入されているのがチリワイン。でも、手元にある業界誌WANDSの7・8月号によると、平均ボトル単価はなんとフランスの約1/3と安さが売りのワインになっています。スーパーに行くとワインコイン(500円)で買えるワインが棚を占領しており、では美味しくないかと言われれば、どれも結構美味しい。この状況をワイン市場の拡大と捉えて喜ぶ半面、もっとプレミアムなチリワインにも着目して欲しい、と思っているのが業界人。

10,000円を超えるスーパープレミアムチリワイン

晩秋にさしかかったマイポ・ヴァレーのアルマヴィーヴァの畑

実はチリワインには市場価格が1万円以上のスーパープレミアムワインがあり、代表格がアルマヴィーヴァ、セーニャ、モンテス・アルファ・エム。どのワインもカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に造られ、若い時に飲んでよし、熟成させて良しのスタイルは世界でも類まれな存在。一昔前は、アルコール度数が高くて果実味がたっぷりあり過ぎる、バランスにやや不安を持つワインが多かったが、最近現地で試飲したアルマヴィーヴァ2013年は濃厚な果実味がありながらもきめ細かい質感があり、セーニャ2014年はボディーの重さよりミネラルを基軸とした凛としたバーガンディータッチに変わっており、モンテス・アルファ・エム2012年はブラインドで試飲したら熟成したマルゴー村のワインと言いそうなエレガンスを身に纏っていた。

チリでも肉料理の定番“ハラミのステーキ”とモンテス・アルファ・エム 2012年

結論としてチリのスーパープレミアムワインでキーとなるのは、独自性を伝えることなんじゃないかと。イタリアのボルゲリのワインが短期間でスーバースターに君臨するようになったのは、ボルドーと同じブドウ品種で造られながら、ボルドーワインより若くして飲んで美味しく、熟成させる必要が少ないなど明確なトークが要因の1つ。チリという異なる国の異なる気候条件でブドウを栽培すればスタイルも異なってるので、今まで以上にその特徴が伝えられ、飲まれ、リピートされればヨーロッパ陣営やカリフォルニアが独占しているスーパープレミアムレンジにチリが食い込んでいけるのではないだろうか。それにはもっと広くの人にワインを試飲して頂く機会が必要なのでは、との結論に至り、何時か合同試飲イヴェントを開催しましょうね、で会はお開きとなった。

最後に飲んだスーパープレミアムチリワイン、アリストス

ブルゴーニュのラ・ロマネを所有する、ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレールの当主ルイ・ミッシェル氏が造っているワイン。カベルネ・ソーヴィニヨン特有の豊かな果実味はありながら、本職のピノ・ノワールに感じられる静謐で透きとおるミネラル感が極上です。ボルドーに例えると右岸のスタイルに近く、冷涼な気象条件で造られ酸味がしっかり残ったヴィンテージのシャトー・ラフルール・ペトリュスが想起させられます。