第7回 「男と女のワイン術」その2

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公開日 : 2017.8.10
更新日 : 2023.7.12
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エノテカのワインバイヤーが、ワイン界で活躍する人々をインタビューしてとことん語り合う企画「ワインバイヤーズトーク」。プロフェッショナルならではの視点で、料理とのマリアージュや最新のワイントレンドに切り込んでいきます。

第7回目となる今回は、前回に引き続き、銀座「わいん厨房たるたる」のオーナーソムリエ兼シェフであり『男と女のワイン術』『男と女のワイン術2杯めーグッとくる家飲み編』共に日本経済新聞出版社 の著者としても知られる伊藤博之さんがゲスト。その刺激的(?)なタイトルと、かつてない実用的な内容から累計9万部とヒットしたご著書の内容にも触れながら、「男と女のワイン術」を伝授していただきました。

バイヤー:

前回は「失敗しないラム肉のソテー」素晴らしいレシピを教えていただき、ありがとうございました!対談後、やや変則レシピになっていまいましたが自宅で作って妻に献上したことろ、大好評でした。さすが「男と女のワイン術」を応用したマリアージュはハズレないですね。

バイヤー作:ラムと野菜の香味炒め

本日も、前回と同じく普段飲みよりもちょっといいワインと、それに合わせたおもてなし料理のレシピを教えていただきます。どうぞよろしくお願いします。

伊藤:

こちらこそどうぞよろしくお願いします。

バイヤー:

ところで伊藤さん、ソムリエバッジをコックコートのど真ん中に付けているのが気になって仕方ないのですが(すでにお気づきの方も多いかと思います)、どうしてですか?

伊藤:

ああこれですか、一応、ワインはメインだから中心にバッジを、でも共に楽しむ料理も同じくらい力を入れています、という決意表明です。

バイヤー:

な、なるほど~!!

バイヤー:

本日ご用意したのは、ニュージーランド産の白ワインです。ニュージーランドといえばソーヴィニヨン・ブランですね。日本への輸入量No.1(食品産業新聞調べ)のシレーニ社が造る上級キュヴェですが、ソーヴィニヨン・ブランのメッカ、マルボロの中でも厳選した区画で栽培されたブドウを用いた、ワンランク上のソーヴィニヨン・ブランです。

伊藤:

これは想像以上に厚みがあって飲みごたえがあり驚きました!ソーヴィニヨン・ブランは種類によってはグリーン系の香りが強いものもありますが、このエステート・セレクション・ソーヴィニヨン・ブランの特徴は“グレープフルーツ”。グレープフルーツの果肉と皮の間の白い部分を思い出しました。爽やかなだけじゃなく、華やかで、かつほの苦い感じもありますね。

今回は、このグレープフルーツな感覚、酸味・果実味に柑橘の香りに合わせて、トマトを使ったレシピを考えてみました。トマトにも酸味や甘味旨味、青っぽい甘やかな香りがありますね。似通ったところがあり相性が抜群です。

オーブンに放り込むだけで完成

伊藤さん:

しっかりとしたソーヴィニヨン・ブランだったので、ワインのジューシーさに合わせて、ジューシーなもも肉を選びました。鶏肉に、タイム・おろしニンニク、オリーブオイルでマリネしておいたものを、オーブンで焼いて、トマト角切りソースをのせるだけの簡単レシピです。 ワインの香りに合わせてタイムで風味付け、ワインの厚み旨味に負けないようニンニク風味で味の上乗せです。

魚でも鶏でも「皮」のあるものは普通は表面をパリッとさせたいですから、お店ではフライパンで油をかけながらじっくりと焼き上げたりします。でも今回のワインに合わせるには、焦げ目をあまり必要としませんので、ご家庭であればオーブンか魚焼きグリルだけで、適宜焼いて火が通れば十分です。

バイヤー:

確かに、オーブンだと火加減の調整が簡単で、焼いている間の時間が自由に使えますね。ゲストがいるのにフライパンに張り付きっぱなしではいけないですよね。これもゲストをもてなすときには大事なポイントです。

伊藤さん:

どなたでも失敗なく作れる料理だと思いますよ!それと、オーブンに入れる時、タイムはこうしてチキン上にのせておいてください。焼き上がりにはタイムが香ばしく焼けて、カリカリのタイムをトマトのソースに入れるとより香りがよくなりますよ。

これぞまさに夏のおもてなし料理

鶏もも肉の香草焼き-フレッシュトマトと一緒に

バイヤー:

これはビジュアル的にもおもてなしにぴったりですね!

伊藤さん:

トマトソースには、こんがり焼いたタイムを混ぜていますが、飾り用のタイムもくずしてふりかけるのがおすすめです。ぜひ、トマトだけ、チキンだけをワインと合わせてみて、その後でチキン&ソースを同時に食べてみてください。

バイヤー:

さっそくいただいてみます。なるほど、チキンだけだと酸味が物足りないですが、トマトの酸味が加わるだけでワインの酸味とちょうど合っていいですね。トマトだけだと少しトマトの青臭さが目立ってしまいます。チキンとソースを同時に口の中に入れると、ハーブの香りとトマトの酸味、チキンのコクが見事に合わさって、これはワインに合いますね~。

伊藤さん:

そうですね。マリアージュを考える時は、料理をこうやってバラバラに食べると、ワインとの相性が素材ごとにわかりやすいのでおすすめです。今回はワインがフレッシュな白だったので生のトマトを使用しましたが、例えばイタリアのサンジョヴェーゼといった赤ワインなら、ホールトマトを使ったソースが合いそうですね。

トマトソースは、角切りトマトに塩・こしょうとレモン汁とオリーブ油をすこし使っていますが、今回仕入れたトマトの味+鶏肉(前回のラム同様スーパマーケットで買ってきました)で、このワインを飲んだ時の一体感を高めるためのもの。「料理とワインの酸味を合せる」「コクのあるワインには料理にまろみを」との考えです。お使いになるトマトや鶏の質に応じて、一緒に食べるトマトと鶏のバランスを変えたり、足りないときはレモンや油を追いがけしたりと、色々試すのも楽しいですよ。

バイヤー:

ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン人気はすでに定着してきた感がありますよね。

伊藤さん:

そうですね。チリやボルドー産のソーヴィニヨン・ブランは1,000円台前半から揃いますが、ニュージーランド産の場合は2,000円前後~が相場でしょうか。その分、ソーヴィニヨン・ブランという品種の特徴がはっきりと出ていて、コクや奥深さも感じられます。普段飲みとしてはちょっと高級ですが、おもてなしにはちょうどよい価格帯ですね。

バイヤー:

白ワインの王道といえばシャルドネを使ったワインですが、このニュージーランド産のソーヴィニヨン・ブランはどういったシチュエーションが向いてますか?

伊藤さん:

シャルドネはバランスがとれていて味わいのイメージは図形で言うと「〇」に対して、ソーヴィニヨン・ブランは酸味もあるし香りも個性的で「△」なイメージでしょうか。でもこの「ザ・ストレイツ」は冒頭で話したように厚みやコクがあるから、〇を包み込む「大きな△」のソーヴィニヨン・ブランなんです。

丸から飛び出ている尖ったところは、このワインの酸味や香り・風味です。 廉価なソーヴィニヨン・ブランは、この時期だと、特に一杯目は冷た〜くして爽快感・清涼感を楽しみむものでしょう。 でもこのワインは、爽やかな酸味や風味、華やかさを、コク旨みと共に、「味わって」欲しい、料理との相乗効果も一緒に楽しんで頂きたいですね。

バイヤー:

なるほど、味わいを図形化するとイメージが湧きやすいですね。実はシレーニの会社のロゴは逆三角形なのですが、素晴らしいワイン、素晴らしい食事、素晴らしい会社、のビジョンを三位一体で表現しているのと、3つの道が交差してできているトライアングル・ヴィンヤードにワイナリーが所在していることからデザインされました。このラベルを見せながらソーヴィニヨン・ブランの説明をすれば、その味わいがグッとゲストの記憶に刻まれそうです(笑)。さすが伊藤さん、『男と女のワイン術』心得ていらしゃいます!この2回の対談でワイン術がぐんと上がった気がしています。本当にありがとうございました!

【レシピ】

鶏もも肉の香草焼き-フレッシュトマトと一緒に

■材料

・鶏もも肉1枚(300g前後)

・塩こしょう適宜

・オリーブ油大さじ2

・おろしニンニク小さじ1/2

・タイム7~8本

③トッピングの具材

・トマト150g(中だと1個見当)

・塩こしょう適宜

・Exオリーブ油大さじ1

・レモン汁小さじ1

・焼けたタイム葉適宜

■作り方

①塩こしょうした鶏もも肉を、オリーブ油・ニンニクにまぶし、タイムを貼り付けて、ラップで密着させてマリネしておく。

②タイムを一旦とり外して、鶏もも肉の上に乗せて、オーブンかグリルで焼く(230℃で14分が目安)

③トマトを7~8mmの角切りにしたものに、塩こしょうで軽く下味をつけ、Exオリーブ油・レモン汁に焼けたタイムの葉を適宜加えて混ぜ合わせる

④焼けた鶏もも肉をカットして皿に盛り、上に③を乗せる

伊藤 博之(いとう ひろゆき)

「わいん厨房たるたる」オーナーソムリエ兼シェフ。埼玉県生まれ。芝浦工業大学工業化学科卒業後、素材メーカーに研究者として勤務するが、フランス出張をきっかけにワインに目覚め、2000年 銀座に「たるたる」を開店。ソムリエ協会認定ソムリエ。共著に『男と女のワイン術』 『男と女のワイン術 2杯目 グッとくる家飲み編』/日本経済新聞出版社弟1作は啓文堂書店2015年新書大賞。そして八重洲ブックセンター2015年新書売上部数年間第一位を獲得。

わいん厨房たるたる

104-0061 東京都 中央区 銀座8丁目12-1 セイコー銀座ビル2F

公式Facebook

伊藤 博之さんのご著書

ともに日本経済新聞出版社 

今回ご紹介したワイン

エステート・セレクション・ザ・ストレイツ・ソーヴィニヨン・ブラン

/ シレーニ・エステート

(ニュージーランド マールボロ)

2,800 円 (3,024 円 税込)

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