プレステージキュヴェのクリスタルがあまりにも有名なルイ・ロデレール。しかし、メゾンの高い評価を支えているのは全生産量の80%以上を占めるスタンダードキュヴェ、ブリュット・プルミエかもしれません。
そこで今回は、ワインジャーナリストの山本明彦氏も「私にとって、シャンパーニュのメートル原器だ」と語る、ルイ・ロデレール ブリュット・プルミエの品質の秘密に迫ります。
目次
クリスタルのセカンドラベル?
ブリュット・プルミエを語る上で、まず最も重要なことはブリュット・プルミエはクリスタルと表裏一体のワインだということです。セカンドラベルというと大げさですが、それに近い存在なのです。
クリスタルは1876年、ロシア皇帝の特注でルイ・ロデレールが造り出した世界最古のプレステージ・シャンパーニュ。ビオディナミ栽培された、メゾンが所有する畑の中でも恵まれた条件のグランクリュから生産されていますが、実はクリスタルに使用されるブドウには条件がもう一つあります。
それは樹齢25年以上のブドウしか使用しないということです。では樹齢25年に至るまで、そのブドウたちはどうしているのか?その答えがブリュット・プルミエ。
クリスタル用のグランクリュ畑のブドウで樹齢が25年に満たないものは、ブリュット・プルミエに使用されているのです。考え方はボルドーのセカンドラベルと同じと言えるでしょう。
自社畑のほとんどがグランクリュとプルミエクリュ
次にブリュット・プルミエの品質の鍵を握っているのは畑です。
「ルイ・ロデレールは生産量の70%以上をまかなえるという約240haの自社畑を持っている」と、驚くべき事実のようによく語られますが、一般的なメゾンはどの程度なのかを知らなければ凄さが伝わりません。これがどれだけ突出したことかは、他の大手有名メゾンと比較するとよくわかります。
メゾン | 所有面積 | 生産量 |
Louis Roederer | 240ha | 約3,500,000本 |
A | 288ha | 約6,000,000本 |
B | 65ha | 約2,400,000本 |
C | 27ha | 約1,000,000本 |
※参考:各メゾン公式サイト、Christie’s World Encyclopedia of Champagne & Sparkling Wine
メゾンAは自社畑の大きさが高品質の鍵として知られているメゾンですが、それと比較してもルイ・ロデレールの生産量に対する自社畑比率が圧倒的なのが一目瞭然。
これだけでも凄いことですが、さらに忘れてはならないことがあります。それは、所有している畑のほとんどがグランクリュとプルミエクリュに格付けされている畑だということ。
ブリュット・プルミエは、この自社畑のブドウをふんだんに使っています。その中には前述のクリスタルの畑も含まれているのですから、品質の高さにも納得です。
天才醸造家ジャン-パティスト・レカイヨン
ジャン-バティスト・レカイヨン氏
そして最後に、ブリュット・プルミエの品質を支えているのが天才醸造家と名高いジャン-バティスト・レカイヨン氏の存在です。レカイヨン氏はブリュット・プルミエの最終ブレンドを調整しているだけではなく、常にブリュット・プルミエの品質を向上させ続けています。
例えば最近では、ブリュット・ナチュールの経験から野生酵母の可能性を見出し、それまで使用していなかった野生酵母をブリュット・プルミエにも使用するようになったそうです。
もちろん現在もより高みを目指すために、ブリュット・プルミエに含まれている買いブドウの品質を向上させる取り組みを実施中。
ブドウを選定して買うのではなく、農家の所有する畑の中から優良な区画を事前に指定して購買したり、ブドウ農家を定期的に訪問し、ルイ・ロデレールのチームがノウハウを伝えてブドウ栽培をサポートしたりしているそうです。もっと美味しくなると嬉しいですね。
ブリュット・プルミエをもっと楽しむ!
最後にルイ・ロデレールのファンの方々に、ブリュット・プルミエをもっと楽しめるとっておきの情報をお伝えします。
①実はボトルサイズで味が違う!
シャンパーニュの保存にはマグナムサイズが適しているので味が違います…という話ではありません。なんとブリュット・プルミエは、マグナム (1500ml)とフルボトル(750ml)サイズで残糖量が違います。味が本当に違うのです!
なぜ違うのかと言うと、それぞれのボトルサイズで一番おいしい味は残糖量が違ったから、というシンプルな理由から。品質を追求するルイ・ロデレールらしいですね。
どちらのボトルがどうなのか?ここではあえて明言しませんので、気になる方は飲み比べてみてください。
②同じ見た目でも中身が違う!
ブリュット・プルミエに限ったことではないのですが、ノンヴィンテージのシャンパーニュは同じラベルでも、ワインの大部分を占めるベースワイン(ブリュット・プルミエでは約70%)のヴィンテージが毎年異なります。もちろん、レカイヨン氏のような各メゾンの醸造責任者が毎年一貫性のあるキャラクターになるようにブレンドを行っていますが、飲み比べてみると微妙な違いはわかるもの。
そこでルイ・ロデレールのホームページでは、便利な機能を提供しています。ブリュット・プルミエのボトル裏面にあるIDを打ち込むと、ベースワインのヴィンテージとボトリングされた年などがわかる仕組みです!
※Cuvee 2014という箇所がベースワインのヴィンテージ
なんだか味がイメージと違うと思ったら調べてみると面白いですよ。毎年味が違うと思うと、一度飲んだシャンパーニュも改めてワクワクして楽しめます。もしブリュット・プルミエと出会ったら試してみてくださいね。