第44回 土着品種とブレンド

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公開日 : 2019.9.2
更新日 : 2023.7.12
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石田博氏のコラム

奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!

あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。

石田博氏コラム

ニューワールドの台頭でワインの世界地図を大きく塗り替えられ、ワインのカテゴリーも産地から品種へと移行してゆきました。結果、カベルネ、シャルドネといったメジャーな品種が世界中で植えられ、その名を付けたワインが産出されるようなりました。

しかし近年、その揺り戻しが起きました。世界中でシャルドネが造られているなか、その産地、造り手として、どのように「他にはない個性」をアピールしてゆくかが、課題となっているのです。

例えば、オレゴンでは全生産者がピノ・ノワールを造っています。「オレゴン? ピノ・ノワールならあるよ」となってしまうのです。

そして消費者の嗜好も変化しています。「みんなと同じ」で安心する時代から、個性的なもの、自分に合ったテイスト、一味違ったものを求めるという傾向が出てきました。

そんな流れを受け、注目されているのが土着品種です。スペインのアルバリーニョ、メンシア、ボバル、イタリアのアルネイス、ファランギーナ、ネレッロ・マスカレーゼなどがその代表格です。そして、その土着品種の豊富さから近年クールなワイン産地として一世を風靡したのがギリシャ、そしてジョージアです。

土着品種の特徴であり、良さとして、複数品種のブレンドがあります。土着品種は大変個性的です。言い換えれば不完全なところがあります。そこでそれらをブレンドすることにより、互いを補完し、他にはない個性を創り出しているのです。

アメリカや南アフリカではカベルネやシャルドネ、またはジンファンデルに地中海系品種やローヌ品種を多数ブレンドすることでユニークな個性のワインを造る生産者も少なくありません。

土着品種、ブレンドをワイン生産史上、3000年に渡り、守り続けているのがポルトガルです。国際品種によるヴァラエタルワインが席巻している時もポルトガルは土着品種のブレンドによるワイン造りをモットーとしてきました。トゥリガ・ナショナル、ティンタ・ロリシュ、トゥリガ・フランカから素晴らしい赤ワインが生まれます。

ポルトガルというとポートワインが大変有名です。ドウロ川中〜上流の畑から取れたブドウを醸造し、舟で河口付近のボデガに運ばれ、ポートワインとなり、熟成され、出荷されることが、義務付けられていました。1986年EU加盟を機に法律がEUに準じることになり、上流の生産者たちは自らのワインを自ら自由に出荷できるようになりました。その結果、ドウロというD.O.がスティルワインの産地として誕生しました。その品質はポルトガルでも最良のものとして、今日賞賛されています。

ラモス・ピントは高品質なポートワインの老舗メーカーで、傘下のキンタ(ドメーヌ)からスティルワインを産出しています。

デュアス・キンタス 2015は、深みがあり、緻密な印象。熟したブラックベリーやボイセンベリー、セミドライの牡丹、甘草、土っぽい香りと複雑。加えて、バニラやトースト、鉄分、わずかにドライミート、乾いた石と、非常に詳細で、インテグレートされています。味わいはソフトでエアリーな広がり、アルコール度は高いが、酸味とタンニンと調和がとれている。ヴォリュームのあるタンニンはきめ細かく、余韻をリフレッシュするとともにフォーカスのあるフィニッシュを創ります。

土着品種ならではの明確な個性とブレンドによる重層的な風味が大変まとまりよく表現されており、精密かつテロワールの個性が十分に感じられるワインは、牛肉や仔羊、豚肉、ドウロの名物である猪などの串焼き、煮込みなどと幅広い料理と楽しめます。

土着品種から造られたワイン

1880年に設立されたポートワインの第一人者、ラモス・ピント。1898年には王室御用達の特権を得、1990年にはシャンパーニュのルイ・ロデレールがワイナリーを買収し強力な体制のもとにクオリティを上げています。 こちらはポルトガル最北部ドウロにある2つの畑から収穫されたブドウを用いた赤ワイン。

一部フレンチオークを用い12ヵ月熟成させ、瓶詰め後18ヵ月を経てリリースされる自信作です。

土着品種から造られたワイン

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